🚢 SHIP BRIDGE|第3回 心理学基礎編|学習の仕組み

こんにちは。

社会福祉法人SHIP「サード八王子」で世話人として勤務しながら、
社会福祉士を目指し、通信制大学で学んでいる橋爪です。

大学で学んだ知識を教科書の中だけで終わらせるのではなく、障がい福祉やグループホームでの実践、自閉症のある方への支援と結び付けながら、
「学びを支援へ。支援を安心へ。」という思いを、この「SHIP BRIDGE」を通してお届けしています。

第2回では、「記銘・保持・想起」という記憶のメカニズムから、その人にとって分かりやすい伝え方や環境について考えました。

今回のテーマは、そこからもう一歩進んで、

「人は経験から、どのように学んでいくのか?」

という「学習」の仕組みです。

今回は、心理学における「条件づけ学習理論」の中から、

代表的な「古典的条件づけ」と「道具的条件づけ」について見ていきます。

少し難しそうな名前ですが、実は私たちの日常生活にも深く関係している考え方です。

それでは、第3回心理学基礎編の航海へ出発しましょう。🚢

📚 Today's Bridge

経験から学ぶ「条件づけ学習理論」

私たちは日々、さまざまな経験をしながら生活しています。

「この音がすると、何かが始まる。」

「これをすると、こんなことが起こる。」

こうした経験から学ぶ仕組みを、今回は「古典的条件づけ」と「道具的条件づけ」という二つの視点で見ていきます。

🔔 古典的条件づけ ― 刺激と刺激が結び付く

古典的条件づけは、「レスポンデント条件づけ」とも呼ばれます。

代表的なのが、パブロフによる犬の実験です。

犬はもともと、エサを与えられると自然に唾液を分泌します。そこで、エサを与えるときに特定の音を繰り返し提示しました。

すると、音とエサの経験が繰り返し結び付くことで、やがてその音だけでも唾液を分泌する反応が見られるようになりました。

エサ + 音 → 唾液
↓
音 → 唾液

これが古典的条件づけの基本的な考え方です。

ポイントは、「刺激と刺激の結び付きによって、反応が形成される」ということです。

梅干を見ると唾液がでるイメージですね!

🐭 道具的条件づけ ― 行動と、その結果が結び付く

もう一つが、道具的条件づけ(オペラント条件づけ)です。

代表的な研究として知られているのが、「スキナー箱」を用いた実験です。

箱の中にいるネズミが偶然レバーを押すと、エサが出てきます。

最初は偶然だった行動でも、

レバーを押す → エサが出る

という経験を重ねることで、ネズミは次第にレバーを押すようになります。

ここで重要なのは、行動の後にどのような結果が起こったかという点です。

ある行動の後に起こる結果によって、その行動が将来起こりやすくなったり、起こりにくくなったりする。これが道具的条件づけの基本的な考え方です。

「お手伝いをして褒められたことで、またお手伝いをすることが増える」ようなイメージですね!

🔍 何が違うの?

🔔 古典的条件づけ
「刺激」と「刺激」
の結び付き

🐭 道具的条件づけ
「行動」と「結果」
の結び付き

どちらも「経験から学ぶ」という点では共通していますが、何と何が結び付いて学習されるのかが異なるのです。


🌉 Bridge Note

学びを現場へ ー 行動の背景を考える

福祉の現場では、利用者様のさまざまな行動に出会います。

そのとき、目に見える行動だけではなく、行動の前後にある出来事や、本人にとっての意味にも目を向けることが大切です。

例えば、自閉症のある方の中には、一人ひとり異なりますが、特定の物や活動、感覚などに強い興味・関心を示すことがあります。

仮に、水に繰り返し触れることを楽しんでいる方がいたとします。

一見すると、「水にこだわっている」という行動だけが目に入るかもしれません。

しかし、その方にとっては、

  • 水面がキラキラと光って見えること。
  • 手に触れたときの感覚。
  • 水が流れていく様子や音。

そうした感覚が心地よかったり、興味を引くものになっていたりする可能性もあります。

そこで大切になるのが、

「どうしたら、その行動をやめてもらえるだろう?」
だけではなく、
「なぜ、その方は水に興味を持っているのだろう?」

と考えてみることです。

🔎 行動の「前・行動・後」を見てみる

行動分析には、行動をその前後の出来事との関係から捉える「三項随伴性(ABC分析)」という考え方があります。

ABCとは、次の三つの視点です。

  • A:Antecedent(先行事象)
    行動の前に何があったのか。
  • B:Behavior(行動)
    実際にどのような行動が見られたのか。
  • C:Consequence(結果)
    行動の後に何が起こったのか。

先ほどの水の例を、ABCの視点から簡単に整理してみます。

A|水道や流れる水が目に入る
↓
B|水に触れ続ける
↓
C|水に触れることで感覚や音が生じる

このように整理すると、「水に触れる」という行動だけでは分からなかった、行動の前後にある環境や本人にとっての経験について考える手掛かりになります。

もちろん、この一例だけで「この行動の理由はこれだ」と決めつけることはできません。

本人の障害特性や感覚の特徴、これまでの経験、好きなことや得意なことといったストレングス、そして行動の前後にある環境などを丁寧にアセスメントしていく。

そうすることで、目に見える行動の奥にある、その方なりの理由や意味が少しずつ見えてくることがあります。

⏱️ 「やめる」ではなく、「次が分かる」工夫へ

そして、もう一つ考えたいのが活動の切り替えです。

例えば、水に触れることを楽しんでいる最中に、突然「もう終わりです」と伝えられても、すぐに次の活動へ気持ちや行動を切り替えることが難しい場合があります。

そのようなとき、その方にとってタイマーが分かりやすい方法であれば、

「タイマーが鳴ったら、この活動は終わり」
「その次は○○をする」

という流れを、あらかじめ分かりやすく示す方法も考えられます。

こうした経験を繰り返すことで、タイマーの音や表示が、活動の終わりや次の予定を知るための手掛かりになることがあります。

ただし、大切なのは、タイマーを「行動を止めさせるための道具」にしないことです。

タイマーが分かりやすい方もいれば、写真や絵カード、スケジュール、実物など、別の方法が分かりやすい方もいます。

だからこそ、その人を知り、

「どのような方法なら、本人が見通しを持ちやすいだろう?」

と考えることが大切になります。

本人の好きなことや心地よい感覚を大切にしながら、その方に合った方法で活動の終わりや次の予定を分かりやすくする。

そうした環境を整えることが、安心して次の行動へ移るための支援につながるのだと思います。

条件づけ学習理論を学ぶことは、行動の変化を理解するだけでなく、その人が重ねてきた経験や、行動の背景に目を向けるきっかけにもなるのです。


💡 Today's Point

🔔 古典的条件づけ
「刺激」と「刺激」
の結び付き

🐭 道具的条件づけ
「行動」と「結果」
の結び付き

🔎 三項随伴性
行動の「前・行動・後」
から背景を考える

目に見える行動だけで判断せず、本人の特性やストレングス、これまでの経験、行動の前後にある環境などにも目を向ける。

そして、その人に合った方法で「分かる」「見通せる」環境を整えていくことが大切です。


🎯 Challenge!

今日の航海の内容を振り返りながら、チャレンジしてみましょう!🚢

では、次の3つの問題の答えを選んでクリック!

問題①

古典的条件づけの基本的な考え方はどれでしょう?

① 行動と結果の結び付きを学習する

❌ ブブー!
これは道具的条件づけの考え方です。


② 刺激と刺激の結び付きを学習する

🎉 正解!
古典的条件づけでは、刺激同士が結び付くことで、それまでとは異なる反応が生じることがあります。


③ 記憶した情報を長期間保存する

❌ ブブー!
これは第2回で学んだ「記憶」に関係する内容です。

問題②

道具的条件づけで大切なのは、どのような関係でしょう?

① 行動と、その後に起こる結果

🎉 正解!
ある行動の後に何が起こったのかによって、その行動が将来起こる頻度に影響するという考え方です。


② 二つの刺激だけの関係

❌ ブブー!
刺激同士の結び付きは、古典的条件づけの中心となる考え方です。


③ 一度覚えた情報を思い出すこと

❌ ブブー!
これは第2回で学んだ「想起」に関係する内容です。

問題③

今回の学びを支援へ生かすとき、大切な視点はどれでしょう?

① 行動だけを見て、良い・悪いを判断する

❌ ブブー!
目に見える行動だけでは、その方にとっての理由や背景まで分からないことがあります。


② すべての利用者様に同じ方法で切り替えを促す

❌ ブブー!
分かりやすい方法は一人ひとり異なります。タイマー、写真、絵カード、スケジュールなど、その方に合った方法を考えることが大切です。


③ 行動の背景を考え、本人に合った環境や手掛かりを考える

🎉 正解!
行動の前後に何があったのか、どのような経験や感覚が関係しているのかを考え、本人の特性やストレングスを踏まえて、その方にとって分かりやすい環境や方法を考えることが、一人ひとりに合った支援につながります。

🌟 Challenge Complete!

全問正解できましたか?😊
また次回のChallenge!にも、ぜひ挑戦してくださいね。🚢🌉


🌊 今日の航海日誌

今回、条件づけ学習理論について学び、人の行動にはこれまでの経験や、その行動の前後にある出来事が関係することがあると知りました。

支援の現場でも、目に見える行動だけを捉えるのではなく、「なぜ、この行動が起きているのだろう?」と、その背景へ目を向けてみる。

好きな感覚があるのかもしれない。
これまでの経験が関係しているのかもしれない。
次に何が起こるのか分からず、不安なのかもしれない。

三項随伴性(ABC分析)のように行動の前後を整理することで、こうした可能性を考える手掛かりが得られることもあります。

そして、その方に合った方法で「終わり」や「次の予定」を分かりやすくすることが、安心して活動を切り替えるための支援につながる場合もあります。

「行動を変える」ことから考えるのではなく、
まず「その人を知る」ことから始める。

私自身も、一人ひとりの特性やストレングス、経験、環境に目を向けながら、その方の「分かる」と「安心」につながる支援を考えていきたいと思います。


🚢 SHIP BRIDGE

学びを支援へ。支援を安心へ。

大学での学びを、日々の小さな気づきと支援へ。

これからも、皆さまと一緒に学びの橋を架けていけたら嬉しく思います。

また次回の航海でお会いしましょう。🚢🌉


🚢 次回の航海予告

テーマ:「心理的ストレスとストレスコーピング」

私たちは日々の生活の中で、さまざまな出来事や環境の変化に出会い、ときには「ストレス」を感じることがあります。

でも、同じ出来事を経験しても、感じ方や受け止め方は一人ひとり同じなのでしょうか。

次回は、心理学における「ストレスの理論的な背景」と、ストレスに対処していく「ストレスコーピング」について学びます。

どうぞお楽しみに。🚢🌉


🚢 SHIP CREW 募集中

社会福祉法人SHIPでは、利用者様一人ひとりの「安心した暮らし」を支える仲間を募集しています。

知識や経験以上に大切なのは、「人を想う気持ち」と「学び続ける姿勢」です。

この「SHIP BRIDGE」を通して、「こんな支援を実践してみたい」「もっと学んでみたい」と感じていただけたなら、とても嬉しく思います。

いつか同じ船で、それぞれの学びを持ち寄りながら、利用者様の安心した暮らしを支えていける日を楽しみにしています。

心より、新しい仲間との出会いをお待ちしております。

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